Aさんの例

Aさん(22歳、男性)

大学を卒業後、第一志望のうつめど社に入社。昔から努力家で、頑張った分成績も優秀だった。会社での仕事も、これまで通り頑張ればうまくやれるはずと思っていた。

ところが、現実は厳しかった。Aさんは、なかなか仕事が覚えられず、上司からミスを指摘されることが続いた。Aさんの上司は厳しい人で、小言を言われることも多かった。Aさんは『自分は何でこのくらいの事もできないんだろう』と、イライラし、落ち込んだ気分になった。

次第に疲れが抜けなくなり、頭痛がするなど体調も悪くなってきた。Aさんは『周りのみんなはうまくやっている。自分だけ遅れるわけにはいかない。このまま頑張っていれば、そのうち上手くやれるようになるはず。』と考え、仕事について誰にも相談せず、独りでがんばろうとした。しかし、自己流でやってみても、仕事はなかなかうまくいかない。疲れや頭痛はひどくなる一方である。繰り返し『自分は何でこれくらいの事もできないんだろう』と考えているうちに、Aさんの気分の落ち込みはますます強くなっていった。

それでは、Aさんの例を5つの視点から整理してみましょう。

そのときの状況
・なかなか仕事が覚えられず、小さなミスを指摘されることが続いている

その時考えていたこと(思考)
・自分は何でこんな事もできないんだろう
・周りはうまくやっているし、自分だけ遅れるわけにはいかない
・このまま頑張っていれば、そのうち上手くやれるようになる

その時の気分
・いらだたしさ
・ゆううつ

その時の身体の反応
・疲労感
・頭痛

その時とった(とらなかった)行動
・誰にも相談しなかった
・自己流で頑張った

Aさんの例を図で表すと、こんな感じになります。

この図を見ると、Aさんの『思考』、『気分』、『身体の反応』、『行動』がつながっていることがわかります。

5つの視点をつかってAさんの状況を文章にすると、以下のようになります。

『なかなか仕事が覚えられず、小さなミスを指摘されることが続いている』時(状況)に、『自分はなんでこんなこともできないんだろう』と考え(思考)ると『いらだたしい、ゆううつ』な気持ち(気分)になり、『誰にも相談せずに自己流で取り組む』(行動)が、疲労感や頭痛がひどくなる(身体の反応)ばかりで結局うまくいかず、繰り返し『自分はなんでこんなこともできないんだろう』と考え(思考)ているうちに、『ゆううつ』な気持ち(気分)が強くなり…

思考、気分、身体の反応、行動は互いにリンクしています。物事がうまくいかないときは、これらのつながりが負のスパイラルのように悪循環を起こしていることがよくあります。Aさんの例は、まさにそんな状態です。

悪循環のどこかを断ち切ることができれば、抜け出せる可能性があります。そのヒントを見つけるために、この5つの視点から自分を整理することができるようになりましょう。

>>整理するときのコツ